【名字の言】令和5年6月16日
~~「けれど、希望はなくすまい」
14歳のポーランドの少女がつづった日記~~
雑記帳に、その日の出来事がびっしりと書かれてある。所々、子どもらしい、つづりの間違いもある。ナチス占領下のポーランドで、14歳で命を落とした少女ヴァンダ・プシブィルスカ。彼女は戦時下で日記をつづった
記録が残っているのは、1942年から44年までの間。自分の勉強部屋が持てるようになったことなど、日常の喜びが記されている一方、戦争への怒りなど、10代の少女の赤裸々な心情が垣間見える
爆撃によって自宅を失った。それでも、彼女は平和の到来を固く信じた。亡くなる1カ月前の日記には、こう記している。「わたしたちが希望をなくしかけているなんて、それこそ恥だ」「どんな戦い、どんな試みにしても、うまくいくときもあれば、いかぬこともある」(米川和夫訳)
彼女の日記が私たちに教えてくれること――それは、希望は自らが創り出すものであり、過酷な現実にあっても、人間は胸中に希望を抱いている限り、強く生き抜くことができるということ
世界では、いまだ戦火が続く。戦争の犠牲になるのは、いつも女性であり、子どもだ。私たちは、一日も早い危機の終結を強盛に祈り続けたい。「けれど、希望はなくすまい」とつづったヴァンダのように。